ビジネスメールや職場での会話で「考えます」と伝える場面は多いですよね。けれども、相手が上司や取引先の場合、そのまま使うと少し軽く聞こえてしまうことがあります。そんなときに役立つのが、「考える」を丁寧に言い換える表現です。
「検討いたします」「熟慮いたします」などの言葉を適切に使い分けることで、相手に誠実さや敬意を伝えられます。
この記事では、ビジネスメール・会話・面接などのシーン別に、「考える」を自然かつ上品に言い換える方法を、例文付きでわかりやすく解説します。
『考える』の意味と敬語での基本表現
「考える」はどんな意味を持つ?
「考える」という言葉には、単に頭の中で思うだけでなく、「判断する」「推測する」「計画を立てる」など、幅広い意味があります。
たとえば、「旅行を考える」は「計画を立てる」に近く、「進路を考える」は「検討する」「熟慮する」といった意味合いに変化します。
このように文脈によってニュアンスが異なるため、状況に応じた言い換えが大切になります。
敬語に言い換えるとどうなる?
「考える」はそのままでも丁寧語に変化できます。たとえば、「考える」→「考えます」で丁寧語、「考えております」で謙譲語に近い表現になります。
ただし、目上の人に対して使う場合、「検討いたします」「熟慮いたします」「思案いたします」といったよりフォーマルな表現を選ぶと、より自然で丁寧な印象になります。
また、ビジネスでは「考えます」よりも「検討いたします」「前向きに考えさせていただきます」など、行動を前提とした表現が好まれます。
「考えます」と「検討いたします」の違い
一見同じように思えるこの2つの言葉ですが、微妙な違いがあります。「考えます」はあくまで思考段階であり、まだ結論が出ていない柔らかい表現です。
一方「検討いたします」は、何らかの基準や条件を踏まえて慎重に判断する姿勢を示す表現で、ビジネス上ではより信頼感があります。
たとえば、上司に「その件について考えます」と伝えるよりも、「その件につきましては、検討いたします」と言ったほうが、丁寧で前向きな印象を与えられるでしょう。
目上の人に使える『考える』の丁寧な言い換え一覧
ビジネスで使いやすい言い換え10選
「考える」を丁寧に言い換えるとき、単に語尾を「〜ます」にするだけでは不十分な場合があります。以下のような表現を覚えておくと、どんな場面でも安心です。
言い換え表現 | ニュアンス・使い方 |
---|---|
検討いたします | 前向きに判断する姿勢を示す最も一般的な敬語 |
熟慮いたします | 慎重に深く考えるニュアンス。重要な決定時に適す |
思案いたします | 柔らかく丁寧な印象。人との関係に配慮した言い方 |
考えさせていただきます | 謙譲語として広く使われる。断りや保留の場面に便利 |
協議いたします | 複数人で話し合いながら考えるニュアンス |
精査いたします | 詳しく調べたうえで考える、という堅い表現 |
前向きに検討いたします | 積極的な姿勢を伝える定番フレーズ |
検証いたします | 事実関係を確かめながら考える際に適する |
再考いたします | 一度の結論を見直すときに使う表現 |
判断いたします | 思考の結果として結論を出す意味で使用 |
どの表現も「考える」より丁寧で、目上の人への配慮を感じさせる言葉です。状況に応じて自然に使い分けましょう。
会話・メールでの自然な置き換え例
敬語を使ううえで大切なのは、「形式よりも自然さ」です。以下のように言い換えると、相手に柔らかく、かつ誠実な印象を与えられます。
- 「その件について考えます」
→ 「その件につきましては、検討いたします。」 - 「後ほど考えます」
→ 「後ほど熟慮させていただきます。」 - 「よく考えてから決めます」
→ 「十分に検討のうえ、判断いたします。」 - 「少し考えさせてください」
→ 「少々お時間をいただき、検討させてください。」
ビジネスメールでは、「検討」「判断」「ご相談」などの名詞をうまく組み合わせることで、よりフォーマルな印象に仕上がります。
敬語として不自然にならないポイント
「考えます」を丁寧に言い換える際、注意したいのが二重敬語や過剰表現です。
例えば、「ご検討させていただきます」は「ご〜する」と「〜させていただく」が重なっており、正しくは「検討させていただきます」で十分です。
また、「考えさせていただきます」は便利な表現ですが、頻用すると曖昧で逃げの印象を与えることも。重要な案件では「検討いたします」「熟慮いたします」など、意志を感じさせる言葉を使うのがベターです。
シーン別に使い分ける『考える』の言い換え
上司への報告・相談メールの場合
上司に意見を伝える際には、「上から目線に聞こえないこと」と「前向きさを示すこと」がポイントです。
単に「考えます」では距離が生じたり、受け身な印象になることもあります。そこで以下のような言い換えが効果的です。
- 「その件について考えます」
→ 「その件につきましては、前向きに検討いたします。」 - 「後ほど考えたいと思います」
→ 「詳細を確認のうえ、改めて検討させていただきます。」 - 「考え中です」
→ 「現在、社内で協議中です。」
また、メールの締めくくりに「結果をご報告いたします」「進捗を共有いたします」と添えると、主体的な姿勢をより強調できます。
クライアント対応・提案時の表現
取引先や顧客に対しては、「丁寧さ」と同時に「信頼感」を意識した表現が重要です。保留を伝える場合でも、ネガティブに聞こえないように工夫しましょう。
- 「そのご提案について考えます」
→ 「そのご提案につきましては、前向きに検討いたします。」 - 「検討中です」
→ 「社内にて慎重に協議しております。」 - 「改めて考えます」
→ 「改めて精査のうえ、ご回答申し上げます。」
特に「前向きに検討いたします」はビジネスで頻出する万能フレーズですが、曖昧すぎる印象を避けるため、期限や次のアクションを添えるのがおすすめです。
例:「前向きに検討いたします。◯日までにご連絡差し上げます。」
面接・プレゼンでのスマートな言い換え
面接やプレゼンでは、謙虚さを保ちつつも「自分の意志を持っている」印象を与える言葉遣いが大切です。
- 「考えます」
→ 「前向きに検討させていただきます。」 - 「もう少し考えさせてください」
→ 「慎重に熟慮させていただきます。」 - 「考えておきます」
→ 「今後の方向性を踏まえて判断いたします。」
また、回答を一時保留する場合でも、「検討」「熟慮」「精査」といった言葉を使うことで、誠実さと知的な印象を与えられます。
「柔らかく断る」「前向きに保留する」際にも使える万能表現です。
似ているけど違う?関連語の使い分け解説
「検討する」と「熟慮する」の違い
どちらも「よく考える」という意味ですが、使われる文脈が少し異なります。
「検討する」は、ビジネスで最もよく使われる言葉で、「具体的な条件や要素を比較しながら判断する」というニュアンスを持ちます。
一方「熟慮する」は、時間をかけて深く考える、という慎重で重みのある表現です。主に重要な決断や方針転換など、軽く扱えないテーマに使われます。
例文:
- 「新しい企画を検討いたします。」(現実的に比較・判断)
- 「今後の進路について熟慮いたします。」(精神的・長期的に考える)
「思案する」「思索する」のニュアンス
「思案する」は、「どうすれば良いか」と方法や選択肢を考える場面で使われます。人との関係や状況に配慮した柔らかい思考を表します。
一方、「思索する」は、哲学的・抽象的なテーマに対して深く思いを巡らすイメージで、日常会話ではあまり使われません。
例文:
- 「今後の対応を思案いたします。」(行動方針を検討)
- 「人間の幸福について思索する。」(抽象的な探求)
「思案する」はビジネスメールでも自然に使えますが、「思索する」は論文・エッセイなどでの使用が適しています。
フォーマル度と使用場面の比較表
表現 | フォーマル度 | 主な使用場面 | ニュアンス |
---|---|---|---|
考える | ★☆☆☆☆ | 日常会話・一般的表現 | シンプルで柔らかい |
検討する | ★★★☆☆ | ビジネス全般 | 条件を比較し判断する |
熟慮する | ★★★★☆ | 重要な決断・正式な場 | 慎重で重みのある印象 |
思案する | ★★★☆☆ | 会話・メール・調整 | 柔らかく丁寧な印象 |
精査する | ★★★★★ | 公的書類・報告書 | 詳細に確認・検証する |
思索する | ★★★★★ | 学問・哲学的文脈 | 抽象的・理論的に考える |
ビジネスでは「検討する」「熟慮する」「思案する」を覚えておくと十分対応可能です。相手との関係性や状況に応じて、適切な語を選ぶことで文章の印象が大きく変わります。
例文で学ぶ!自然で丁寧な使い方
実際のメール文例
丁寧な言い換えを身につける一番の近道は、具体的な文脈の中で使い方を覚えることです。
以下の例文を参考に、シーンに合わせたフレーズを使い分けてみましょう。
例1:上司への報告メール
ご提案いただいた件につきましては、社内にて前向きに検討いたしております。
結論が出次第、改めてご報告申し上げます。
例2:取引先への返信メール
このたびのご提案、誠にありがとうございます。
現在、詳細を熟慮のうえ、慎重に判断いたしております。
決定次第、すぐにご連絡差し上げます。
例3:面接・選考関連のメール
お話しいただいた内容を踏まえ、今後の方向性を検討させていただきます。
貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
このように、「検討いたします」「熟慮いたします」などを適切に使うことで、誠実で信頼感のある印象を与えることができます。
会話フレーズの言い換え集
ビジネス会話では、かしこまりすぎると不自然になりがちです。以下のように柔らかく言い換えると、自然でバランスの取れた印象になります。
カジュアルな言い方 | 丁寧な言い換え |
---|---|
ちょっと考えてみます | 少しお時間をいただき、検討させていただきます |
考えておきます | 今後の方向性を踏まえて判断いたします |
もう一度考えます | 再度、熟慮のうえ決定いたします |
考え中です | 現在、社内で協議しております |
後で考えます | 追って精査のうえ、対応いたします |
自然な会話では、完全な敬語よりも柔らかい丁寧語を心がけると、聞き手に安心感を与えられます。
使いすぎ注意な表現とその代替案
「考えさせていただきます」は便利な表現ですが、使いすぎると逃げている印象を与えてしまうこともあります。
特に提案を受けた際に繰り返すと、「検討する気がないのでは?」と誤解される可能性があるため注意が必要です。
よくある言い回し | 替えると好印象 |
---|---|
考えさせていただきます | 前向きに検討いたします/慎重に熟慮いたします |
考えます | 判断いたします/精査のうえ対応いたします |
考えております | 社内にて検討中でございます/詳細を確認しております |
要は、単に「考える」と言うよりも、どのように考えるかを言葉で示すことが大切です。それだけで、同じ内容でも信頼度がぐっと上がります。
まとめ
「考える」は日常的に使われる言葉ですが、ビジネスやフォーマルな場面では、そのまま使うと軽く聞こえてしまうことがあります。
「検討いたします」「熟慮いたします」「思案いたします」など、場面に応じた言い換えを使うことで、丁寧さと誠実さを両立した印象を与えられます。
上司や取引先へのメールでは、「前向きに検討いたします」「慎重に判断いたします」など、行動を前提とした表現を選ぶと効果的です。
また、「考えさせていただきます」は便利な一方、使いすぎると曖昧な印象を与えるため注意が必要です。
言葉の選び方ひとつで、あなたの印象は大きく変わります。ぜひこの記事で紹介したフレーズを活用して、より丁寧で信頼される言葉を実践してみてください。