ビジネスメールで「かなり前の件ですが…」と書いて、少し違和感を覚えたことはありませんか?
日常会話では自然な表現でも、ビジネスの場では「曖昧すぎる」「軽い印象を与える」と感じられることがあります。
実は、時間の経過を示す言葉にはフォーマル度の違いがあり、使い分けを意識するだけで文章の印象がぐっと良くなります。
この記事では、「かなり前」をスマートに言い換える方法と、シーン別の例文を紹介します。あなたのメールや報告文を、より丁寧で信頼感のある表現に変えていきましょう。
相手・状況別の言い換え方と例文
ここでは、相手やシーンに応じた「かなり前」の言い換え方を紹介します。
取引先・社内・久しぶりのやり取りなど、実際のメール文にそのまま使える具体例を中心にまとめました。
取引先や顧客に対して使う場合
社外メールでは、丁寧さと具体性がポイントです。
「かなり前の件ですが」は避け、「以前ご相談いたしました」「過日にお話しした」などを使うと好印象になります。
例文:
- 「以前ご相談いたしました件につきまして、追加のご提案をさせていただきます。」
- 「過日お打ち合わせいたしました内容について、進捗をご報告申し上げます。」
- 「以前よりご検討いただいておりました案件の件でご連絡いたしました。」
ここで大切なのは、「いつ」「どの件か」が相手に伝わるように書くことです。たとえば「以前(〇月頃)」と添えるだけでも、相手は思い出しやすくなります。
社内・上司への報告メールで使う場合
上司やチームメンバーに送る場合は、ややカジュアルでも明確に伝わる表現を選びましょう。「以前共有した」「しばらく前に確認した」など、具体的な動作を入れると伝わりやすくなります。
例文:
- 「以前共有した資料をもとに、再度内容を確認しました。」
- 「しばらく前に依頼いただいた件について、対応が完了しました。」
- 「以前にご相談した課題に関して、別の案を検討中です。」
このように、文の主語や動作をはっきりさせることで、スムーズな報連相ができます。社内では「かなり前」よりも、「以前」「しばらく前」「少し前」などが自然です。
久しぶりの連絡・再開シーンで使う場合
久しぶりに取引先や知人へ連絡する場合、「かなり前のご縁で…」という書き出しはやや曖昧です。
代わりに「以前お世話になった」「しばらくご無沙汰しております」など、相手を気遣う言葉を入れると丁寧です。
例文:
- 「以前お世話になりました◯◯株式会社の△△と申します。」
- 「しばらくご無沙汰しております。その後お変わりなくお過ごしでしょうか。」
- 「以前ご一緒させていただいたプロジェクトの件で、改めてご連絡いたしました。」
「ご無沙汰しております」はフォーマルながらも温かみがあり、久しぶりの再開に最適な表現です。「かなり前」を使わずとも、自然に時間の経過を伝えられます。
「かなり前」という一言を置き換えるだけで、相手への印象が驚くほど変わります。特にビジネスでは、「時間を正確に伝える」よりも「相手への敬意が感じられる言葉」を選ぶことが大切です。
「かなり前」を含む自然なメール例文集
ここでは、前章で学んだ言い換え表現を使った実践的なメール文例を紹介します。社外・社内・フォーマル/カジュアルなど、状況に合わせたテンプレートとして使えます。
ビジネスメールでの例文(取引先向け)
社外メールでは、敬語と時制のバランスが重要です。「以前」「過日」「しばらく前」などを使い、落ち着いた丁寧さを意識しましょう。
例文①:進捗報告メール
件名:以前ご相談した案件の進捗について
株式会社〇〇
△△様いつもお世話になっております。
以前ご相談いたしました△△の件につきまして、現在の進捗状況をご報告申し上げます。
詳細は添付資料をご確認ください。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
例文②:フォローアップの連絡
件名:過日にお打ち合わせした件について
過日お打ち合わせいたしました〇〇の件ですが、その後のご検討状況はいかがでしょうか。
追加資料が必要な場合は、すぐにご用意いたします。ご多忙のところ恐縮ですが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
フォーマルな相手ほど、「かなり前」は避けて、時間をやわらかく示す表現が無難です。
社内メールでの例文(上司・同僚向け)
社内では、もう少し親しみやすく自然なトーンでOKです。ただし、あくまでビジネス文なので「軽すぎる表現」は避けましょう。
例文①:報告・共有メール
件名:以前の打ち合わせ内容について
お疲れさまです。
以前の打ち合わせで話題に上がった△△について、追加で調べた内容を共有します。
ご確認のうえ、ご意見をいただけますと幸いです。
例文②:依頼・相談メール
件名:しばらく前にご相談した件について
しばらく前にご相談した△△の件ですが、再度検討する必要が出てきました。
お手数ですが、明日のミーティングで再確認をお願いできますでしょうか。
社内では「以前」「しばらく前」などを使うと、柔らかくも信頼感ある印象になります。
フォーマル寄り/カジュアル寄りの比較
同じ内容でも、言葉選びで印象は大きく変わります。以下の例で比較してみましょう。
| トーン | 言い回し | 印象 |
|---|---|---|
| フォーマル寄り | 「過日にご相談いたしました件につきまして」 | 丁寧・落ち着いた印象。取引先や上司向け。 |
| カジュアル寄り | 「以前お話しした件について」 | 柔らかく自然。社内や親しい相手向け。 |
| ややラフ | 「だいぶ前の件ですが」 | 口語的で親しみやすいが、フォーマルでは不向き。 |
どの言葉が正解というよりも、「誰に」「どの媒体で」伝えるかによって最適な表現は変わります。相手との距離感を考えて、最も自然なトーンを選びましょう。
「かなり前」という言葉を一歩引いて見直すことで、文章全体の品がぐっと上がります。言葉の丁寧さは、そのまま“信頼感”につながりますよ。
「かなり前」をスマートに言い換える基本表現
ここでは、ビジネスシーンで自然に使える「かなり前」の言い換えを、フォーマル度別・使いやすさ別に整理します。メールでも会話でもすぐ活かせる内容です。
シーンを選ばず使える汎用的な言い換え
もっとも使いやすいのは、「以前」「しばらく前」「過去に」といった汎用的な表現です。これらは、ビジネスのどんな場面でも通用する万能ワードといえます。
- 「以前ご相談した件ですが…」
- 「しばらく前にお話しした内容について…」
- 「過去にお取引のあった企業様より…」
「以前」はフォーマル・カジュアルどちらにも使え、時期をぼかしながらも柔らかく聞こえます。
また「しばらく前」は親しい社内関係に向いており、「過去に」は報告書や資料などの書面に適しています。
「以前」「過日」「先日」など定番の表現と使い分け
ビジネスでよく使われる「時間を表す敬語」には、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。
以下の表で整理してみましょう。
| 表現 | フォーマル度 | 意味・使う場面の目安 |
|---|---|---|
| 以前 | 中〜高 | 幅広く使える定番表現。時期を曖昧にしても自然。 |
| 過日 | 高 | フォーマルな書面向け。「過日はありがとうございました」など。 |
| 先日 | 中 | 1週間〜1か月以内の出来事に使うのが自然。 |
| このたび | 高 | 現在または直近の出来事への丁寧な言い方。 |
| しばらく前 | 中〜低 | カジュアル寄り。社内・同僚向けに。 |
たとえば、取引先宛の文書では「過日」「以前」を使うと上品な印象に。
一方、社内連絡では「先日」「しばらく前」が自然です。場面によって切り替えるだけで、文全体のトーンが整います。
「だいぶ前」「長らく前」などカジュアル寄りの表現
もう少し柔らかく話したい場合や、口頭での会話では「だいぶ前」「長らく前」も便利です。
ただし、これらはビジネスメールでは少しくだけすぎる印象を与えることもあるため、相手との関係性を見極めることが大切です。
- 「だいぶ前に伺った話ですが…」
- 「長らく前から検討していた件について…」
このように使えば、口調に温かみが出て、距離の近い社内コミュニケーションに適しています。「だいぶ前」よりも少し丁寧にしたい場合は、「以前より」「しばらく前から」と言い換えると自然です。
ビジネスでは、堅すぎず、くだけすぎずのバランスが大切です。
どの表現も万能ではありませんが、相手・立場・媒体(メール/会話)を意識して選べば、自然で信頼感のある印象を与えられますよ。
「かなり前」の意味とビジネスシーンでの注意点
日常会話とビジネスでの「かなり前」の違い
「かなり前」は、日常会話では「ずいぶん前」や「だいぶ前」と同じように、時間の経過をぼんやりと伝える言葉です。
たとえば「かなり前に行った旅行」「かなり前に聞いた話」など、カジュアルな場面では自然に使えます。
しかし、ビジネスの場では曖昧さが問題になります。
「かなり前」という表現には、明確な期間が含まれていないため、受け手が「どれくらい前なのか」「なぜ今その話を出すのか」を判断しづらくなるのです。
ビジネスでは「具体性」と「正確さ」が信頼につながるため、抽象的な表現は避けたほうが安心です。
「かなり前」は失礼?印象が悪くなる理由
「かなり前」という言葉そのものが失礼というわけではありません。ただ、使い方によっては「雑」「準備不足」と受け取られることがあります。
たとえば、取引先に「かなり前にご相談した件ですが…」と書くと、「具体的にいつのこと?」「今さら感がある」と感じさせてしまうことも。
また、相手が年上・上司の場合、「かなり」という副詞がカジュアルすぎて、丁寧さに欠ける印象を与えることもあります。
ビジネスメールでは、「かなり前」よりも「以前」「過日」「しばらく前」など、柔らかく落ち着いた表現が好まれます。
たった一言の違いでも、受け手の印象が大きく変わるのが日本語の面白いところですね。
フォーマルな文書では避けたい理由と背景
ビジネス文書や公式なメールでは、曖昧な表現が誤解を生む恐れがあります。
特に、過去の案件や資料、会議などを指す場合、「かなり前」だけでは情報の整理が不十分と受け取られることも。
そのため、「○月○日に実施した」「昨年○月」「以前お伝えした」など、具体的な時期を明示した表現が推奨されます。
さらに、敬語としてのバランスも重要です。「かなり前」は口語的で直接的な印象が強く、書き言葉としてはややラフです。
そのため、上司や顧客向けの文書では、「過日」「しばらく前」「以前より」など、文語調の丁寧な言い換えを使う方が印象が良くなります。
ビジネスでは、言葉の「正確さ」だけでなく、「印象」も信頼関係に直結します。
たとえ伝えたい内容が同じでも、少し表現を変えるだけで「仕事ができる人」という印象を与えることができるのです。
「かなり前」を英語で言うと?海外ビジネスでの表現
ここでは、「かなり前」を英語で表現したいときに使えるフレーズを紹介します。日本語同様、英語でもフォーマル度やニュアンスが異なるため、シーンに合わせて選ぶことが大切です。
“a long time ago” との違い
多くの人がまず思い浮かべるのは “a long time ago” ですが、これはカジュアルな会話向けです。
たとえば「I met him a long time ago.(彼にはかなり前に会いました)」のように、親しい間柄や雑談では自然ですが、ビジネス文書では少し砕けすぎた印象になります。
ビジネスメールでは、より控えめで落ち着いた言い方を使う方がスマートです。その代表が “some time ago” や “previously” などの表現です。
フォーマルに伝える “some time ago” “previously” など
ビジネス英語では、曖昧な期間を丁寧に伝える際に以下のような表現がよく使われます。
| 英語表現 | フォーマル度 | 意味・使い方例 |
|---|---|---|
| some time ago | 中〜高 | 「少し前に」「以前に」:ややフォーマル。例:We discussed this some time ago. |
| previously | 高 | 「以前に」「かつて」:書き言葉・文書向け。例:As we mentioned previously, … |
| a while ago | 中 | 「しばらく前に」:自然な口語表現。例:I sent you the report a while ago. |
| earlier | 中 | 「先ほど/以前に」:具体的な時間に使える。例:As mentioned earlier, … |
| in the past | 中〜高 | 「過去に」「これまで」:報告書やプレゼン資料にも使える。 |
たとえば、取引先宛のメールでは以下のように使えます。
例文①(ややフォーマル)
We discussed this some time ago, but I would like to follow up on the matter.
(以前この件について話し合いましたが、改めて確認させていただきたく存じます。)
例文②(フォーマル)
As mentioned previously, we have completed the initial phase of the project.
(以前お伝えした通り、プロジェクトの初期段階は完了しております。)
どちらも「かなり前」と直接言っていませんが、自然に“以前の話題”を再提示する英語表現です。
ビジネスメールで自然な英文例
海外との取引やグローバルな職場でも、「以前お話しした件ですが」という言い回しはよく登場します。
以下の例文をそのままテンプレートとして使えます。
例文①(丁寧な再確認)
I would like to refer to the project we discussed some time ago.
(以前お話ししたプロジェクトについて、改めて触れさせていただきます。)
例文②(柔らかいフォローアップ)
Following up on our previous discussion, I wanted to share an update.
(以前の打ち合わせを踏まえて、進捗のご報告をいたします。)
例文③(社内向け)
As we talked about a while ago, we should revisit this issue soon.
(しばらく前に話した件ですが、そろそろ再検討が必要です。)
かなり前という言葉をそのまま訳すよりも、以前を英語で自然に表現するのがポイントです。直接的な訳よりも、ビジネスらしい柔らかさを意識すると伝わりやすくなります。
国際的なビジネス環境では、あいまいさを残しながらも丁寧に伝える表現が好まれます。日本語でも英語でも、曖昧にしつつも誠実にというバランスが大切ですね。
「かなり前」を言い換えるときのNG例と注意点
言い換え表現を使うときに気をつけたいのが、「丁寧にしようとしたのに逆効果になる」ケース。
ここでは、誤解を招きやすい使い方や避けたい言葉づかいを具体例とともに解説します。
曖昧な表現を避けるべき理由
「かなり前」「だいぶ前」「昔」などの表現は、時期が不明確なため、ビジネスではトラブルの原因になりやすいです。
たとえば「かなり前に依頼した件ですが」と書かれたメールを受け取ったとき、受け手は「それ、いつの話?」「どの資料?」と混乱してしまいますよね。
そのため、いつ頃を補足する一言を入れるのが理想です。
- ❌:かなり前に送付した資料について
- ⭕️:以前(〇月頃)に送付した資料について
また、「昔」や「だいぶ前」など、会話調の表現はビジネス文書では不向きです。フォーマルな印象を保つなら、「以前」「過日」「しばらく前」を選びましょう。
時制のズレで誤解を生むケース
英語でも日本語でも、時間表現と動詞の時制が噛み合っていないと不自然になります。
たとえば以下のような例です。
- ❌:「かなり前に送ります」→時制が未来形で矛盾
- ❌:「かなり前に伺います」→実際は「伺いました」など過去形にすべき
- ⭕️:「以前に伺いました」「先日お伺いしました」
また、「かなり前からお願いしていた件」なども、場合によっては相手に催促のニュアンスを強く与えることがあります。
伝えたい意図が「確認」や「再提案」であれば、「以前お願いしていた件の進捗を確認させていただきたく存じます。」のように、やんわりとした言い回しにするのが安全です。
TPOに合わない言葉遣いの見直し方
社外文書や正式な依頼文では、口語的な副詞や曖昧表現を排除することが基本です。
たとえば次のような表現は、一見丁寧そうで実は不自然です。
- ❌:「かなり前のような気がしますが」
- ❌:「だいぶ前にご連絡したかと思います」
- ⭕️:「以前ご連絡いたしました件につきまして」
また、相手が目上の方の場合、「気がします」「〜かと思います」などの推測語は控えましょう。断定を避けるのではなく、明確かつ穏やかな表現に言い換えることが重要です。
「かなり前」こんなときどうする?(FAQ)
ここでは、「実際に迷いがちな場面」を想定したQ&A形式で、
かなり前をどう言い換えれば自然かを整理します。実務でよくある質問をそのままピックアップしました。
「かなり前の資料を送ってもいいですか?」
→ 「以前の資料を参考までにお送りいたします」と言い換えましょう。
かなり前と言うと「古い情報かも」と相手が構えてしまうことがあります。「以前の」「過去に使用した」など、あくまで有用な再提示として伝えるのがポイントです。
「かなり前の話題を出すのは失礼ですか?」
→ 相手との関係性や話題の内容によりますが、ビジネスでは慎重に扱うのが◎
そのまま切り出すのではなく、「以前お話しした内容を思い出しまして」「過去の打ち合わせで出た案を再検討したい」など、話題を持ち出す理由を添えると自然になります。
「久しぶりの連絡」で自然な言い換えは?
→ 定番は「ご無沙汰しております」。
「かなり前に連絡したきりですが」はやや唐突なので、「しばらくご無沙汰しております」「以前お世話になりました」など、相手への敬意と感謝を一言添えるのがコツです。
「かなり前の会話を持ち出す」時の丁寧な表現は?
→ 「以前伺ったお話をふと思い出しまして」「以前お聞きした内容に関連して」などが自然。
ふと思い出してという柔らかい表現を使うと、懐かしさを伝えながらも違和感を与えません。
「かなり前にお会いした方」への挨拶文例は?
→ 「以前お世話になりました」「大変ご無沙汰しております」が定番です。
「かなり前にお会いした」と書くと距離感が強調されすぎるため避けましょう。
例:
「以前お世話になりました◯◯株式会社の△△でございます。久しぶりにご連絡差し上げます。」
このFAQを意識するだけで、迷いやすい時間表現の扱いがぐっと洗練されます。「いつかの話」を「信頼感ある再提案」に変えられるのが、言葉の力ですね。
まとめ
「かなり前」という言葉は、日常ではよく使う表現ですが、ビジネスの場では少し曖昧で軽い印象を与えてしまうことがあります。そのため、「以前」「過日」「しばらく前」など、場面に合わせて使い分けることが大切です。
また、取引先・上司・同僚といった相手ごとにトーンを調整し、「いつの話なのか」「なぜ今伝えるのか」を明確にすることで、信頼感のある文章になります。
英語表現でも “some time ago” や “previously” を使えば、自然で丁寧に伝えられます。
ビジネスでは、たった一言の違いが印象を左右します。言葉を少し整えるだけで、あなたのメールや文書ができる人の文に変わります。私自身も、こうした言葉遣いを意識するようになってから、やり取りがスムーズになりました。
この記事が、あなたのビジネスコミュニケーションをより気持ちの良いものにする手助けになれば嬉しいです。

